申告実務デスク

2026年10月08日 / 約3分

e-Tax障害で第三者の贈与税情報が閲覧可能に、税理士実務への教訓

e-Tax障害で第三者の贈与税情報が閲覧可能に、税理士実務への教訓のニュース解説イメージ

ニュースの概要

国税庁のe-Taxで、システム改修後に一部利用者のマイページから本人以外の贈与税申告情報が閲覧できる状態になっていたことが判明した。対象は79人分の申告書等で、氏名・住所・電話番号・財産の種類や金額に加え、贈与者や関与税理士の情報まで含む計203人分の個人情報が閲覧された可能性がある。実際に第三者情報を閲覧した可能性がある利用者は19人とされ、国税庁は対象者への通知と情報の秘匿を進めている。

引用元: e-Taxのシステム障害で、他人の贈与税申告情報が閲覧可能になった問題が判明(NHK)

分析・見解

システム改修の裏側で起きた「権限分離」の失敗

今回の問題の核心は、マイページの表示ロジックがどの申告書を誰に見せるかを正しく区別できなかった点にある。贈与税は本人だけでなく贈与者や関与税理士など複数の関係者情報が紐づく構造(=データが入り組んだ構造)になっており、改修時に紐づけの条件を一部でも誤ると、別人の申告書が表示される事故につながりやすい。国税庁側は単純な表示バグと説明しているが、電子申告システムの設計では「誰の画面に何を出すか」を決めるアクセス制御(=閲覧権限の仕分け)こそが最も壊れやすい部分であり、今回はまさにそこが壊れた形だ。

民間クラウド会計ソフトとの設計思想の違い

民間の会計ソフトやクラウド税務ソフトでは、顧問先ごとにテナント(=利用者単位の区画)を完全に分離し、万一コードに不具合があっても他社データが混在しない設計が一般的になっている。一方でe-Taxのような官公庁システムは、長年の改修を重ねた結果、機能追加のたびに表示条件が複雑化しやすい構造的な弱点を抱える。今回の件は、単発のミスというより、改修の積み重ねがリスクを高めていく典型例と見るべきだろう。

贈与税という税目特有の機微情報が漏れた重さ

贈与税申告には財産の金額や贈与者との関係性といった、所得税以上にプライベートな情報が含まれる。相続対策として生前贈与を使う家庭も多く、親族間の資産状況が外部に漏れることへの心理的な抵抗は強い。閲覧された203人分には関与税理士の情報も含まれており、税理士側としても「自分の顧問先データが意図せず他人に見られていた」事態への説明責任が生じる点を見落とすべきではない。

再発防止の実効性は「改修前の権限テスト」にかかる

国税庁は再発防止策を講じるとしているが、過去にも同種のシステムトラブルが散発的に起きてきた経緯を踏まえると、重要なのは事後対応よりも改修前のアクセス権限テストの厳格化だ。改修のたびに「他人のデータが見えないか」を網羅的に検証する体制が整っているかどうかが、今後も問われ続ける。

ビジネスへの影響

顧問先への説明責任と信頼維持の実務対応

税理士事務所にとって、今回の件で最も重要なのは顧問先への迅速な情報提供だ。自分の顧問先が対象の19人や203人に含まれる可能性がある場合、国税庁からの通知を待つだけでなく、e-Taxの利用履歴やマイページの表示内容を事務所側でも確認し、異常がないか自主的にチェックする姿勢が信頼維持につながる。何も起きていなくても「確認済みです」と一言伝えるだけで、顧客の不安は大きく和らぐ。

電子申告への過度な一本化を見直す契機に

本サイトのpage-07-etax-readiness.htmlで解説しているように、e-Tax利用時には事前の環境整備とあわせてリスク分散の視点も欠かせない。今回のような表示不具合は利用者側では事前に検知できないため、重要な申告案件では受信通知やメール詳細の控えを別途保存し、万一の際にすぐ内容を照合できる体制を整えておくと安心だ。page-09-submission-receipt.htmlで触れている受信通知の管理手順も、こうした場面で役立つ。

代理送信を行う事務所が見直すべきチェック項目

代理送信を担う税理士事務所は、顧問先の贈与税申告を扱う際、page-10-proxy-notifications.htmlで示す通知管理のフローに加え、マイページ上の表示内容を申告後に一度目視確認する工程を追加することを検討したい。システム側の不具合は防げなくても、早期発見の仕組みを事務所側に持つことがリスク低減になる。

関連記事